罪憑き

安倍吉俊監督の灰羽連盟という作品について考察したいと思う.

この作品の舞台は,グリの街という死後の世界である.

物語に登場するのは前世で自殺した女の子達で,転生した灰羽という天使のような存在に生まれ変わりその街に集っている.

そして彼女達が,前世で背負った孤独・絶望・悲嘆・苦悩など心の中に抱える問題を解決し天国に巣立つという内容である.

あらすじだけ綴ると,よくあるドラマティックな物語に見えるがそうではない.

終盤までは平穏な日常生活の描写が多く,叙情的な流れで進んで行く不思議で印象深い物語である.

罪の輪

物語の主題は,「罪の輪」とよばれるトートロジーからの解放であると私は思う.

「思う」としたのは物語の設定や解説が公開されておらず,確定していないためだ.

罪の輪とは,「罪を知る者に罪は無い では汝に問う 汝は罪びとなりや」という作中のメッセージに集約される.

このメッセージを説明すると,「貴方が罪を知っているならば貴方は罪びとではない。貴方が罪びとではないと思うのならば,貴方は己の罪を認めない罪びととなる。しかし,罪びとと自覚することは罪を知ることであり,貴方が罪びとではないことを意味する。だが,貴方が罪びとではないと考えると…」というように自問すると抜け出せなくなる問いである.

物語に登場するレキという女の子は,正義感が強く面倒見のよい女性として描写されているのだが彼女はこの罪の輪に囚われ天国に巣立つことができない.

彼女の罪の輪は,彼女は彼女自身が面倒見がよいのは「他人への思いやり」という純粋な動機ではなく,「自分が救われたい」という独善的な不純な動機であると捉えていてその罪悪感から抜け出せないというものである.

罪の輪に囚われた彼女は,物語の終盤で罪に蝕まれてしまう.

しかし最期に彼女が,他者を信じ助けを求めることで罪から報われることになる.

結び

罪の輪というトートロジーについて考えるきっかけとなったので面白かった.

日常生活でときどき感じる居心地悪さも,そういうのが発端だったりする.

そういう居心地悪さは,自問では解消できないと物語では示唆している.

その居心地悪さを感じたことのない登場人物に対し,レキは嫉妬をしているのだが作中では間接的に描写されているので趣がある.

幾度か見返したい作品のひとつとなった.

補足

念のため補足しておくが,私は無宗教である. 笑